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Terre Thaemlitz presents... K-S.H.E "Routes Not Roots"
 
- Ura


In Skylarking (Japan), March 2006.

 

とにかく言いたかったのは、そうだ私がハウスミュージックラバー(=クラバー)ではなく、フリークなんだ、いう事であった。それはテクノでも、エレクトロニカでも何だって構わなかったんだが、やはり踊りたかったしできるだけゆるくやろうとした何事も。どこかにルーツを持つ自覚もないから、ただただ無自覚に時間が流れていくのを楽しもうとしたら、そこにハウスがあったんだよ。ジャンルとしても過渡期で、今みたいに様々な完成されたジャンルの棲み分けに繋がる様々な可能性すらも未分化で、得体のしれない音像とダンスミュージックが手を結んでいた、その瞬間を楽しんでいたんだ。これを聴いて久々にそういう思いを取り戻したんだ。NYからやってきた川崎在住テーム・テムリッツ先生の新作。ディープハウスと音響という彼、いや彼女かまあとにかくこの人の特徴が凝縮された傑作。音数少なく、どこからどもなく現れては消えるパルスと、僅かにダンスミュージックの原型を止めるビート。アンダーグラウンド、とは一体正確にどこに位置してるかは分からぬが、快楽に溺れることも、ダンスの機能に特化することもなく、ただただ音がここにい続けるという意味では、確かにこれはアンダーグラウンドの音楽だ。アンダーグラウンドである事の意味を、音に還元したメッセージだ。バリバッリのアゲハウスのサンプリングネタが、小さく無常に鳴り響く「CROSSTOWN」とか、一体どういうことかと不穏な雰囲気を隠せないね。デトロイトに居住し、DJと全く裏腹な暗黒を作り続けるセオ・パリッシュと、テムリッツの作るハウスミュージックは、その境遇や人種に違いはあれど、意識のもうひとつの側へ誘導していく同じ成分を含んでいる。揺れるが、体を動かしているが芯までは熱くならない。高揚のないまま、しかし何かに目覚めている不思議な覚醒感。そこで刻まれるビート、つまり規則的な時間の流れこそが、この種の音楽の本質、であってほしいんだ。いつまでも。