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私はレズビアンではない! Text by Terre Thaemlitz.
しばしの沈黙。 おいおい、この人ってば……本気で……質問しているよぉ! 何故か私はこの質問をされると一瞬唖然としてしまう。私の記憶によると、そんな 反応をするようになったのは、私の‘プロジェクト’がセクシュアリティー(性に対 する認識)やジェンダー(社会的・文化的に形成される性差)を含む複数のアイデン ティティーの確実性を解体することに焦点が絞られていると圧倒的多数の人々が思い 込んでいる事実を知った時から。とはいっても、これまでこの質問は何度となくされ てきた。それと同時に言われたことは、私のこれまでのクイア的所作がすべて、自分 が何者かというものを的確に表わしたがる小煩いゲイ・ボーイの観念的なお座敷芸だ とか、性に対する自分の公式見解と子孫繁栄という生物学的な使命の間の不調和に罪 悪感を感じているストレートな男の的を得ない誤魔化しの同情心だとかと捉えられて いるということ。ここではっきりさせたいことは、もしこの質問をしたインタビュア ーが長年に渡って私の作品をフォローしてきたと伝えてくれていたなら、私としては 批判に満ちた重要情報を伝達することもなかっただろうし、これからここで私が述べ る如何なる返答も馬の耳に念仏のはずだ。しかし、さっきも述べたように、この女性 インタビュアーはありきたりな質問の一つとしてこの質問をしている訳なのだから、 私もお決まりの答えで応戦することになる。つまり、嫌な気分を誤魔化す愛想笑いを 浮かべながら使い古された‘グレーゾーン’の比喩で以て冷静に「へテロセクシュア ルが白、ホモセクシュアルが黒なら、クイアというのはその中間のグレーゾーンを網 羅する!」と述べるという次第だ。 「では、あなたはバイ……」とインタビュアーは続ける。 「違います。私はバイセクシュアルじゃなくて、クイア。バイセクシュアルという のはへテロセクシュアルとホモセクシュアルというの性の二極化を暗に強調する言葉 ですよ。セクシュアリティーには2つ以上の形があるし、2つ以上のジェンダーが存 在するんです。」 「つまり……」とインタビュアーは私がまるで専門知識で彼女をけむに巻こうとし ていて、それに負けないぞとでもいうように、にっこり笑いながら「服装倒錯のよう な第三のジェンダーということ……」と応戦する。 「そうじゃなくて、ジェンダーは3つ以上あるんですけど……。」 沈黙。セクシュアリティーやジェンダーのバリエーションの多さは3つどころでは ないという明白な事実があるにもかかわらず、悲しいことに、私の言葉がねじ曲げら れた論理としてインタビュアーの耳に届いてるのが手に取るように分かるのだ。そろ そろ愛想笑いをもう一度浮かべる時がきたようだ。 口当たりのいい御為倒しに騙されちゃいけない。そもそも、ゲイのメディアですら クイアを充分に理解していないし、その存在を社会に知らしめることもしていないの だから。事実、ゲイ出版物に関わるライターや編集者の多くがもっと直接的な言葉を 使おうという動きに呼応して、今後クイアという言葉を抹殺し、その替わりに‘ゲ イ’や‘レズビアン’を使う状況が増えると予想される。更に、こういった‘クイア 存続の危機’に同情的なゲイのジャーナリストたちですら間違ったクイア解釈をして いるのだ。その一例を挙げるとしよう。クイアに友好的なインタビュアーと話してい た時のことだった。インタビューの前に最近彼が執筆した雑誌を手渡された後、私は 件の女性インタビュアーのことを彼に話した。その時の彼は何も言わず、ばつが悪そ うに顔を赤らめていただけだった。その日の夕方、彼が書いた最新記事の冒頭で私を ‘ゲイ・アーティスト’と書いている箇所を見つけたのである。う〜ん、この言葉は ミル・プラトーのプレス・リリースから抜粋された可能性があるかも……。 再三再四、世界中の友人たちが「テーリ・テムリッツは女と寄り添っている姿を目 撃されているぜ。あいつの‘ゲイ・クイーン’っていうのは嘘っぱちだ」と得意げに 話す人々の逸話を僕に教えてくれる。特に不快なのは、私の友たちフ中でもゲイやレ ズビアンとしての確固たるアイデンティティーを持っている友人にそういうゴシップ を伝える輩だ。それも彼らを正真正銘のホモセクシュアルだと認めた上で、私がホモ セクシュアル・コミュニティーの秩序を乱していることを伝えることで、彼らが驚い たり、怒ったりすることを期待しているのだから始末が悪い。 これを最後に私がゲイか否かという論争にケリを付けたいと思う。
(……でも、私はそれ以外の全てかもしれない) 事実上、私は生まれた時から目に見えない壁に四方八方を囲まれた状態で育ち、自 分の性的欲求を主観的に理解する以前の段階で周囲からホモや女として看做され、そ れに伴う差別的扱いを受けてきた。そんな中で、私は自分の性的なアイデンティティ ー(と、時によってはジェンダー)を、周囲の人間の外見的および内面的性行動とは 明らかに性質の異なる、学習によって知覚する類いのものだということを受け入れる ようになった。ホモセクシュアルであれ、ヘテロセクシュアルであれ、どちらか一つ を選択しようと試みてはみたものの、結局は疎外感と苦痛しか見出せないでいる。更 に両者を以てしても自分の性的行動を反映するに不充分なのだ。例えば(以下に挙げ る疑問は机上の空論ではないのだ)……
しかしながら、赤の他人とはいえ、愛すべき隣人のみなさんには正しい答えを知る 権利があるだろう。 私はゲイか否か。 私はゲイではない。私は面目も誇りもない幸せなクイア。私の存在はゲイという名 を貶めるし、ストレート文化圏にとってはペストのような存在だ。さて、ここまでわ かりやすく説明してもわからなかったら、私が前に書いたセクシュアリティー/ジェ ンダー関連テキスト全部を読み返すことだ。そして面白半分のゴシップで私の友達の 邪魔をするんじゃない。
2000年11月21日
おまけ:ここに書かれてある私の答えに反対し、私を「レズビアンも含むすべてのも のだ」と主張するレズビアン女性たちからの反応が既に到着した。(2000年11月 22日)
次回のテーリの噂の真相シリーズは……「年収150万円でリッチに暮してるって本当?
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